アバターがくれたキセキその2〜バカなふりをしなくていい〜

奇跡(きせき):常識では起こるとは考えられないような、不思議な出来事

 

こんな風にあるがままを認められたことはなかったと思う。

 

 

 

 

 

こんな感じでアバターとの出会いを果たした私だが、この出会いで強烈に印象に残ったことがもうひとつある。

 

初対面とは思えないくらい偉くその子とは気があった。

 

やはり最初はお互いの話をする中で2人とも京都の大学を出てることはわかった。

 

そうなるとやはりこの質問が出てくる。

 

「どこの大学やったん?」

 

 

 

 

……………来た。

 

正直答えたくない質問であった。

 

 

 

 

私は京都大学を卒業している。

 

いわゆる入試においては日本トップクラスの難関大学である(Wikipediaより)。

 

もちろん、自分がここの卒業生であることは誇りに思っているし、自由と独創性を学風とする変態の巣窟である京都大学は大好きである。

 

しかし同時にこの肩書きが持つ世間のイメージ、価値判断も痛いほど感じてきた。

 

京大卒だというだけで色々なことに対するハードルは上がるし(京大卒だってできないこと、苦手なことは山ほどある)

 

京大卒だと言った瞬間、態度が変わる人たちを何人も見てきているし(それは私の一要素に過ぎないのに)

 

「私」である前に「京大」と一括りにされ、そう見られる。

 

「京大」と言った瞬間に感じる人との分離感。

 

誤解を招きそうなので、先に言っておくが、もちろん全ての人がそうではないし、長い付き合いの中でちゃんと「私」を「私」として付き合ってくれる人たちもちゃんといた。

 

私の方もこの肩書きを使って、勝手に特別感や優越感を感じていた部分もあったので一概に相手が悪いとも言えない。

 

だがそんな現状に正直辟易していたこともあり、また、これを明かした時の人の反応が怖くて自分の学歴を明かすのは非常に敏感な領域であった。

 

 

 

 

「……………実は京大やねんかー。」

 

 

 

 

この後の彼女の返答を私は一生忘れない。

 

 

 

 

「あーわかるわかる。なんか聡明な感じするもん。」

 

 

 

衝撃だった。

 

まるで「それがどうしたの?」と言わんばかりに

 

「だってそれがあなたでしょ?」と言わんばかりに

 

全く態度が変わらなかった。

 

それどころかそんな私に「聡明」というとびきりの価値を付け加えてくれた。

 

 

正直めっちゃ嬉しかった。

 

その後もいっぱい話をした。

 

私が視覚と知覚、脳について研究していたこと、人間の視覚は後頭脳で処理されてなどなど、

 

私が普段は隠していた学術的な部分を思いっきり出せた。

 

 

 

 

バカなふりをしなくてもよかった。

 

ずっと私が怖くて隠し続けていた

 

学術的な部分、気高い部分、崇高な部分を認められた気がして、本当に嬉しかった。

 

全ての名札を超えて、彼女はまっすぐ「私」という意識を見てくれた。

 

 

 

 

彼女が私にくれた贈り物は本当大きかった。

 

台詞ではなく、態度ともなんとも言えない彼女の感じが。

 

「この子は何かが違う」と私にアバターマスターという存在が持つ「何か」を感じさせた瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

その3へ続く。